ジュール熱はカロリーの燃焼による熱とは違い、電気を介して仕事を行う電子機器などが放つ熱のことです。
ジュール熱による発熱は、家庭用電化製品をはじめ工業用品や研究機材など、ありとあらゆる電子機器が避けては通れない宿命みたいなもので、どんな些細な機器でさえこのジュール熱を必ず発生させます。
私共の行う業務から、自宅にある家電製品までを「サーマルイメージ放射温度計」を使ってジュール熱を捉えた写真(サーモグラフィー)を公開させて頂きます。
この記事の目次
サーマルイメージ放射温度測定、実際の作業現場
制御盤内作業…その1
「制御盤」とは、機械・装置の遠隔操作などに於いて、制御用の計器類やスイッチ類を一か所に集中した設備です。
私どもの日常の作業は、制御盤内外での配線や結線、加工と組立などです。
それらの作業が終わってからは、特別の理由がない限り外すことはありません。
※海外輸送が伴う需要に対しては、機械を細かく分割しないと搬出できないので、この場合は制御盤以外の分割作業を行い、当地でこの装置の復元作業を行います。
この時、配線につなぎ間違いが起きていれば、各々の単体装置に異常な熱が発生する場合があります。そこで重宝するのがサーモグラフィーです。サーモグラフィーにより「特異域」の確認を行い、結線の異常個所の特定を進めます。
制御盤内作業…その2
作業時、何らかの理由で機器や配線を外し、改めて復元する場合があります。
理論的に正常な接続であっても、装置が正常に作動しないなど不具合があれば、異常個所の特定にサーモグラフィーが役に立ちます。
装置が正常に動かなかったり、個別装置の作動がもっさりしているなどの異常があれば、サーモグラフィーを使い熱の異常個所の特定を行います。
サーモグラフィーを通して特異域を見つけ、異常個所と断定すれば細部を調整します。
それが「サーマルイメージ放射温度測定」です。
制御盤内作業…その3
「制御盤内」のこれらの装置は、自動車産業への部品供給やその他の産業で使われる『レーザー発振器』を使った加工工場へ出荷される物です。
※因みに、制御盤の中に収められている機器への照射(ターゲット照射)を赤外線で行っている為、赤いマルが対角状に投影されます。
パソコン電源アダプター
一般家庭でのサーモグラフィーの温度計測を見てみましょう。
パソコンのアダプターパックの温度は、周囲の温度とはかなり目立って高くなっているのが分かります。
33.2℃と、手で触っても分かるほどの温度になっています。
特徴は、被写体の一部のみ温度差が生じる「特異域」が存在しないことです。
アダプターの極一部の温度分布の「特異域」を表すことはなく、全体の温度が高くなっているのがわかります。
家庭のインターホン
屋外と室内の通信を行う「インターフォン」の本体も温度が高くなっています。
熱が逃げにくい構造の為か、「待機電力」だけで熱が充満しているのが分かります。
この画像では分かりにくいのですが、一部に「特異域」が確認出来ました。
この「特異域」は、100ボルトを降圧し、更に直流電源に変換する装置による電気的な仕事の為でありました。
※実体調査では、この「特異域」の原因を解き明かす為にインターフォンを分解する事が出来ます。
家庭のネット回線用終端装置
「インタネット回線」の「終端装置」や「無線ルーター」は思った以上に熱を帯びているのが分かります。
「終端装置」や「無線ルータ」の筐体の中は、思ったより空間があるので、その中に盗聴・盗撮機器を組み込むことが出来そうです。
ご心配なら、分解できる装置であれば実体調査により分解作業を行わせていただきます。
※調査対象とした装置などを分解する方法は、①ねじを外し内部を明らかにする方法と②ねじなどでは止まっていない場合の解体作業が考えられます。②については、元通りに復元できない場合がありますので、予めお客さまとは協議を行い、ご了承いただいた後に作業を行います。
家庭の壁掛けタップ
「タップ」と呼ばれる電気器具は、「電気による仕事」を行っていないものですので、熱を帯びることはありません。
しかし、この写真のタイプのタップは、「通電ランプ」を装備しているのでランプによる熱が存在するものと解釈出来ます。
LEDなどの極省電力を消費する電気部品を使っても、「特異域」が確認出来る事から、必ず「ジュール熱」を帯びる事がこの写真からもよく分かります。
本タップは、内部を分解できないタイプの既製品でしたので、分解は行いませんでした。
しかし、ご希望であれば実体調査により、分解作業をさせていただく事が出来ます。
分解できない「タップ」であっても、必要であれば筐体を破壊して内部を確認することも出来ます。
盗聴器の場合
「盗聴器」を発見した時の「特異域」の映像です。
分かりにくいので、画像処理を施し黄色の□でコンセントの輪郭を表現しています。
「特異域」を表していますが、コンセントの輪郭(黄色の□)に対して右下寄りに偏っています。
これは「ジュール熱」の熱源を捉えたもので、コンセントの一部のみが熱を帯びていいる事を示し、コンセント全体が熱を帯びていないことがわかります。
これにより、明らかな「特異域」の出現と判断し、実体調査の分解作業を行う要件となります。
「特異域」として現れたジュール熱は、電気的な仕事をしないと起きない熱ですので、明らかに何かがある事が分かります。
今回の熱の温度は33.9℃と人体の体温に近い熱である事が分かります。
※画面左下の熱反応は、コンセントを撮影した者の手の一部とスマホのサーモグラフィー画像です。
サーマルイメージ放射温度測定、メリットとデメリット
メリット
周囲の温度と異なる温度を彩色で表現出来る装置なので、温度差を一目出来る特長があります。
従って、実際に目視するだけでは表面的に見逃してしまう異常(温度差:特異域)を、機械の目で捉える事が出来ます。
些細な温度差でも見逃さないので、サーマルイメージ放射温度測定の使用に慣れていただければ、その効果は絶大と言えます。
デメリット
温度差の抽出に於いて、機器の表示画面の目視を自身の目で行う為、使用に慣れていなければ見過ごしてしまう可能性が起きてしまいます。
使用に慣れていただくには、少々時間が掛かるのではないかと考えます。